2024年11月24日のハイパー縁側@三輪は鍛治秀生さんをゲストにお迎えしました!
テーマは 「三輪 〜人と人が繋がり、心豊かに過ごせるまちへ〜」

盛り上がりをみせる「三輪まちなかつば市」。最後のゲストは、実行委員長を務める鍛治さん。普段は三輪駅近くのデイサービス施設で、作業療法士として働いています。また、桜井市の高齢福祉課の介護予防サービスのコーディネーターを担い、介護予防の取り組みにも力を入れている、と言います。

「つば市」は今年で3年目を迎えました。鍛治さんは、一過性で終わる事なく商店街や参道の店の方々を巻き込み、年々、まちづくりに関わる仲間が増えている事を実感しています。特に「さこすて」が関わる事で、三輪駅も会場として開催し、まち全体で盛り上げる事ができていると話します。

「人との繋がりが希薄だ」と、まちづくりに関する常套句として、よく耳にします。しかし、ここでは自治会や老人会の活動があり、近所同士でも助け合う姿も見られるので、そんな事はないのではないかと鍛治さんは言います。また、体育協会や複数の福祉委員会なども、勢力的に活動しています。ただ、それぞれが縦割りで活動しているので繋がる事はなかった、と指摘します。そこで鍛治さんのしたかった事は、それらを“横に繋げる事”。

各々が単独で活動するだけでは、もったいない。コラボレーションする事で年代関係なく交流し、一緒にイベントを創り上げていく事ができる、と鍛治さんは考えて実現してきました。実際に「つば市」では、様々な団体が関わり、住民同士の交流が生まれ、地域住民や訪れる方の三輪への愛情が深まっていると感じています。

鍛治さんの働く施設では、運動器具がたくさん設置されていますが、身体を動かすという目的だけでなく、人とコミュニケーションをとるという事が前提になっています。人を介して話をする事が、何よりもエネルギーになる。会話をする事が、予防介護や予防医療に繋がる、と鍛治さんは言います。

しかし、施設へ赴き運動や会話ができる高齢の方がいる一方、家から出る事すら大変で、移動する手段がない方がいるのも実状。駅やバス停までの、数十mの移動が難しい方も少なくありません。施設やサービスを利用できない方は孤立しがちになってしまう、と鍛治さんは懸念していました。

そこで、桜井市の事業として運転手含め3人乗りの電動小型車両をレンタルし、移動が難しい方を送迎するというサービスを実施。本日も、実証実験を行っています。このサービスがあれば、移動しづらい方が外に出て人に会う事ができたり、買い物をする事ができます。
また、「つば市」のようなイベントの雰囲気を楽しむ事も。鍛治さんは、「まち中のちょっとした移動を支えたい」と言います。

ただ、電動小型車両の実証実験は、あくまできっかけに過ぎません。今後、自治会レベルや当事者同士で、移動を支援し合うような仕組みづくりが大切だと考えています。
福祉の仕事に長く従事する鍛治さんは、やはり好きなところに出歩き、人と会話する事が「元気の源」である、と痛感しています。どんな人も、移動ができて人と出会える環境づくりを広げていきたい、と話します。

“本当の豊かさ”

三輪を離れ、東京や大阪で働いていた経験もある鍛治さん。都会になればなるほど、箔が付くと感じていた時期もあった、と打ち明けます。しかし、自転車で5分の施設に勤務し、歩いて飲みに行ける場所がある今の生活がとても気に入っています。“戻るべき場所に戻ってきた”という感覚だそう。身近なところにこそ、“本当の豊かさ”があり、自分の求めていたものがある。

また、仕事以外でも「一緒に何かしようぜ」という仲間がいる。「つば市」の実行委員は、みんな個性的。1人1人が面白いアイデアを持っていて、ネットワークも広く、フットワークも軽い。だから、妄想がいつの間にか実現しています。

そして、それぞれに三輪は「初まりの地」だという意識があり、「やってみないと始まらない」という想いがある。前向きな仲間と取り組む事ができ、とても嬉しく感じている鍛治さん。地元と関われば関わるほど、豊かさを実感して幸せだ、と語ります。

そんな鍛治さんも、地元に戻ってきて子どもの運動会に行った時、親同士で仲良く話す人を横目に、誰とも話せなかった寂しい経験があると言います。その経験が原点となり、「挨拶ができる人を増やしたい」と、感じるようになったそう。

PTA会長や様々な活動を通して、“挨拶できる間柄”の人が、明らかに増えてきました。それは、日々の生活で安心感になり、豊かさに繋がっています。まち全体でも、「つば市」を通じて顔見知りが増え、挨拶が飛び交い、安心感のある豊かなくらしに繋げて欲しいと考えています。

「つば市」などのイベントを実現できた反面、まちづくりをしていく中で壁にもぶつかってきた、と話す鍛治さん。今後も、1つ1つの壁をクリアして、自分たちの創りたい景色を1つでも多く生み出していきたい、と言います。まちとしては、三輪を象徴する産業が育って欲しい、と願っています。

鍛治さん個人の野望としては、お金が無くても暮らせるまちを理想としています。最近、『エコビレッジ』の本に出会い、概念を変えてくれたそう。「食べ物を作れるという事は最強だ」と感じた鍛治さんは、まずは畑で野菜を育てる事に挑戦する予定なんだとか。「小金で、豊かに暮らしていきたい」と、穏やかに語って下さいました!

高齢者支援や介護予防・イベント運営・移動手段の提案まで、多世代に必要とされる様々な課題に向き合い実践する鍛治さん。幅広い活動は、人と人とを繋げ、三輪のまちの1人1人の心の豊かさに繋がっています!
地元で育む“本当の豊かさ”を感じながら、幸せを噛み締め、走り続ける鍛治さんの姿が印象的でした!

【鍛治 秀生】
リハビリテーションデイサービス よろこび広場 管理者 / 三輪まちなか「つば市」実行委員会 委員長
1972年三輪生まれ。作業療法士。
現在はリハビリテーションデイサービスよろこび広場管理者として従事する傍ら、桜井市短期集中予防サービスのコーディネーターとしても活動し、介護予防分野に力を注いでいます。また、令和6年度は「地域内移動研究会」を立ち上げ、高齢者等の移動難民課題の解決を模索しています。
三輪まちなかつば市実行委員長としては、イベントを通じて三輪の住民同士が交流できる場を作り、顔見知りが増え、挨拶が飛び交う町にしていきたいという思いがあります。また、三輪の地の歴史的意義を内外に発信することにより、住民、観光客の三輪愛を深めていきたいと思っています。
リハビリテーションデイサービスよろこび広場
三輪まちなか「つば市」

Connected by さこすて

さこすてSustainable Community Station)」は、ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社が取り組む、地域と共生しながら持続可能な駅づくりを進めるプロジェクトで、駅施設や駅前広場・運営手法・プレイヤー発掘などを見据えた検討や実証実験などを行っています。「さこすてみわ」は、三輪駅を舞台として、駅まちづくりする取り組みです。