2020年11月11日のハイパー縁側は、水墨画家の濱中応彦(おうげん)さんをゲストにお迎えしました!
テーマは「雪舟~武蔵 そして横山大観」

水墨画は、墨絵の中の一部にあたります。墨絵には他に色をつける墨彩画などもありますが、水墨画は、全く色を使わないものを指します。

水墨画には中国と日本でも違いがあります。大きな違いは紙だそうで、漉いてつくる日本の紙は水に強く、溜めて作る中国の紙は水に弱いという特徴があり、そのため日本の水墨画は面を描ける、中国の水墨画は線しか描けないという違いがあるそうです。

線と面に限らず、にじむ紙とにじまない紙、青墨か茶墨か、硬水か軟水かなど、水墨画の世界には二つに分かれるものが多いそう。

雪舟をはじめ江戸時代半ば以前に使われていたのはにじまない紙、それ以降の主流はにじむ紙です。にじむ紙とにじまない紙では絵の表情が異なり、“にじみ” と “ぼかし”の世界がそこにあります。

日本水墨画の始まりをつくった雪舟をはじめ長谷川等伯、宮本武蔵、横山大観らの作品を、濱中さんご自身による模写も使いながら解説してくださいました。二刀流として有名で絵画でも能力を発揮した宮本武蔵が、実際は左利きであったことを、右利き、左利きの来場者の体験を通じて示す実演もしてくださいました!

“余白の美”

日本文化の一つとして、水墨画にもある余白。余白はただ描かないことではなく、そこに何を感じるかの世界。水墨画の一番の魅力は、余白の美だと話します。余白は見る人にゆだねられ、それを感じるには鍛錬が求められるものですが、これが日本の素晴らしい文化だと考えています。
余白は楽ではなく、墨をいかに使わないかが難しいところだと濱中さんは話します。

水墨の世界はゆだねる世界。特ににじむ紙では水の量によって絵が変わっていくため、必ずしも自分が描きたいと思った通りにいく訳ではなく、最終的に「こうなったのか」と分かる陶芸にも近い世界だと話します。

30年前に描けた納得できる作品を、また同じように描こうと思っても未だ描けないとお話されていて、墨の一色ながらもとても奥深い水墨画の世界に惹き込まれました。
【濱中 応彦(はまなか おうげん)】
一般社団法人日本水墨画美術協会 理事長
墨風会 主宰
ハマナカ建築環境設計事務所 代表
1945年 山口県山口市生まれ(本名:正彦)
1977年 ㈱神戸凮月堂本社ビル設計監理 建築家としてデビュー
1994年 個展「地球尊敬」展(米国ニューヨーク)エジンバラ公謁見
1996年 英国ロイヤルチェルシーフラワーショー造園部門において造園家ジョンバン・ヘイジ氏とのコラボレーションで襖絵を担当し、ゴールド賞受賞
1966年 個展「地球尊敬」展(JR大阪セルフヴィスギャラリー)
1966年 エドワード王子謁見来日記念(ギャラリークォヴァディス)
1966年 関西大学 環境都市工学部 非常勤講師(~2015年)
2007年 多賀大社(滋賀県犬上郡)に「御神木図」奉納
2013年 テレビ東京「美の巨人たち」において曽我蕭白「雲竜図」を実物大で模写
2013年 水幸亭(滋賀県彦根市)に「十王村龍門之図」奉納
2017年 首相官邸に「瑠璃光寺寂韻」展覧
尼信会館にて個展開催
2020年 画聖雪舟生誕600年