2020年9月24日のハイパー縁側は、金度源(キムドウォン)さんをゲストにお迎えしました。
テーマは「歴史都市防災とまちづくり“防災文化を育むコミュニティデザインについて”」

金さんは地元韓国の南大門の焼失をきっかけに災害からの文化財保護に興味を持ち、文化遺産防災学の分野を唯一やっていた立命館大学に入学し、現在は理工学部の准教授として仕事をしています。

文化遺産防災学が目指すのは、文化財を災害から守る技術・計画を開発し、また歴史から防災に役立つ技術を学び、科学的に検証して現代に活かすこと。理工系なので数値的な解析や検証も行いますが、それだけでなく地域での実践的な取組により防災文化をつくることの両方が重要です。

金さんは防災の観点でのまちあるきや地域住民主体での防災マップの作成・訓練などに関わっています。まちにおける重層的な現状、歴史を丁寧に理解し、課題を把握することを大事にしながら進めています。

金さんは必ずしも昔のものをずっと守っていこう、というスタンスではありません。関わりをもつ先斗町を例にとっても、かつては花街だったのが規模が小さくなり、今は飲食店が増えているのでまちが持続しています。今残っている文化財はいいものをつくってきたからこそ残っているので、新しいものでも『いいもの』をつくりましょうというポリシーを持っています。

“スーパーマン”

地域住民と共に行う防災への取組を通じて、金さんはまちの中にはまちづくりを引っぱる“スーパーマン”がいると気づきました。その人に会えばまちでどんな取組がされているかが分かり、その人に伝えれば防災などにまち全体として関わってくれるという確信を得ています。金さんが関わってきた海外でも、美しいまちには必ずまとめ役になる方がいるそうです。

民間が入りにくい所でも、大学という立場だからこそまちに入ってコミュニティの要素を理解し、地域住民が取り組める防災対策を提案・計画できると締めくくられました。

理論だけでなく、現場に足を運び実際に人と関わりながら事業や活動を進めていく重要性を改めて学ぶ回でした。

【金 度源(キム・ドウォン)】
立命館大学理工学部 准教授/同大学 歴史都市防災研究所 国際協力研究チーム リーダー
1982年2月1日韓国ソウル生まれ、韓国大田市出身。
2008年韓国文化財登録1号である南大門(崇禮門)の火災を契機に文化遺産や歴史都市を災害から守る必要性を感じ、立命館大学に留学。2014年に工学博士授与。
災害に脆弱な美しい世界遺産や文化的街並みの防災計画策定に関わる研究に携わる中、大切な事は防災文化を育てるコミュニティデザインであることに気づき、実践を重ねながらまちづくりの手法を研究中。